カナダで頑張る日本人女性

カナダで頑張る日本人女性 Vol. 26 Momoko Shimada

カナダのどんな所が好きですか?

人々がお互いにジャッジせずにサポートし合っているところです。何か始めたいと思った時に、自分の年齢もしくは立場で、家族や周りからどう思われるかというしがらみが無いところが良いなと思います。

カナダ人の友人に、他人に優しくするように自分にもう少し優しくした方がいいと言われたことがあります。カナダは、自分が楽しむことに罪悪感を感じることを薄めてくれる場所だなと思うんです。女だから、ママだから、妻だから、何歳だからとかそういうことを気にせず、何をしたいかと考えた時、色んなものから目隠しされない、自分の気持ちは今どこにあるのかを見つけやすい所だと感じます。そして、実際に自分が行動にうつしたときも周りがそれを受け入れ、ポジティブに捉えてサポートしてくれます。自らに優しく、自分達が満たされているから人にも注いであげられるだろうなと思います。

いつからカナダに住んでいますか?来た理由を教えてください。

2011年の春に指圧師のインターンでバンクーバーへ来ました。その後、就労ビザで数年勤務したのち移民ビザを取得しました。高校生の頃から英語に興味があり海外に行きたいと思っていましたが、6人兄弟で両親に資金の援助をしてもらうことは到底無理だったので、大学でスポーツ科学を学んだ後、鍼灸あん摩マッサージ指圧師の専門学校に通い国家資格を取得。就職先を探しているときにカナダのインターンを見つけました。来加直前の2011年の3月には、仙台で鍼灸あん摩マッサージ指圧師として東日本大震災の医療ボランティアをしたことはとても良い経験となりました。

また、大学の時に始めたブレイクダンスでNYやラスベガスなど海外の大会に出たりしていましたが、バンクーバーにもダンサーの知り合いがいて、バンクーバーはシアトルやLAも近いこともありたくさん大会があることが分かり、ダンスができるというのも来加を決めた理由の一つです。

 産後6ヶ月からほぼずっとワンオペ育児。沢山の仲間に助けてもらっているそう。写真はブレイクダンスのチームメイトたち。

マッサージ師のお仕事について教えてください。

現在はバンクーバー市内のスパにて月に数回働いています。BC州で鍼灸師として働くためには試験を受け直さないといけないため、バンクーバーではマッサージ師(指圧、タイ、ディープティシュー、スウェディッシュマッサージ) をしています。息子がもう少し大きくなったら鍼灸師の試験に挑戦しようかなと考えています。

母も鍼灸あん摩マッサージ指圧師で小さい頃から鍼などで治療してもらっていました。鍼灸学校に行ったのは母の影響も大きかったと思いますが、小さい頃から怪我が多かったせいか元々身体について興味がありました。身体を痛めて医者に行くと通常休んでと言われるだけでした。休んだらいいのは分かっているけど休めない、休みたくないダンサーやアスリート達をサポートしたいと思い、鍼灸あん摩マッサージ指圧師の道を選びました。人の身体は興味深く、施術は数学と体育を一緒にしたような感覚が面白いです。

ブレイクダンスを始めたきっかけを教えてください。

保育園の同級生の家がバレエスタジオを営んでいたのことがきっかけで小学校1年生からクラシックバレエを始めました。毎日練習をしていたので、中学生になる前に練習のしすぎでアキレス腱を痛めてしまい休んでいたのですが、また踊りたいと思い高校生からコンテンポラリーダンスを始めました。大学入学時に、逆立ちで音に合わせて踊っている人達を見たのがきっかけでブレイクダンス/ストリートダンスを始めました。ストリートダンスのサークルに入り、駅前や許可された野外スペースでダンスの練習を毎日するほど夢中になっていました。その中で、コンテストや大会にも出場するようになり、日本人女性のみで作ったチームを作ってアメリカの大会で男性チームと対戦し勝利したこともあります。

練習での動画

バンクーバーでもダンサーとして活躍されているのをインスタグラムで拝見しました。

カナダ、特にバンクーバーはB-girl(ブレイクダンスする女性)が少ないこともあり、主にジャッジとして仕事をさせてもらってます。最近だと、トロントで開かれたRed Bull主催のカナダ代表を決めるブレイクダンスの大会にジャッジとして呼ばれ行ってきました。その他にもワークショップやレッスン、ゲストエキシビションバトラーなどの仕事をしています。今現在は、ハウスダンスとタイチーを組み合わせたダンスプロジェクトに取り組んでいます。

チームとしては、Diamonds in the Roughというローカルの女性ヒップホップグループに所属していて、今年はコンサートのバックダンサーをしたり、Translinkのハロウィンイベントでパフォーマーとしてのお仕事をしたりしました。年間を通しては、グランビルアイランドやカーフリーデーなどのフェスティバルでのパフォーマンスがメインです。もう一つThe Hoodzという、バンクーバーで何年も活動するうちに仲良くなった北米(Vancouver, Seattle-Tacoma, Tri-City)のBboyたちとチームを組んでいて、ブレイクを練習するときのモチベーションになっています。

コロナでパフォーマンスがキャンセルされるなか、チームメイトとダウンタウンでストリートショウ。息子さんは初めてのストリートショウ。


コロナ中に芸能活動も始め、いまは事務所にも所属しダンサーのお仕事中心に活動させてもらっています。

産後初の息子さんと離れての遠征。ゲストパフォーマンスをチームメイトとNew Yorkにて。

Momoさんのインスタグラムはこちら

Momoさんにとってダンスとは何ですか。

生活の一部です。もともと表現したいと思っていたのは、自分の感情や気持ちだったので即興で自由に踊るときもあるし、どうやったら面白い動きに見えるかなと考え創作することもあります。音楽から受けるインスピレーションから表現することもありますし、いろんなものを見て、色々なものに触れて作り出します。またただ単に楽しんだり、人と時間を共有するために踊ることもあります。私にとって、ダンスだけをずっとしているというよりも、生活の中でいかにダンスも一緒にいるかという感じです。

オンラインコンテストの予選用に撮った動画。

今現在、挑戦していることを教えてください。

私は常にやりたいことがたくさんあります。今はスタントマンに興味があり、武術、特に殺陣(たて)やボクシングを習っています。昨年、将軍という日系TV番組(2023年公開予定)のエキストラとして雇われ仕事をしました。その現場で殺陣(たて)を見たのがきっかけです。実際に始めてみて、力を入れたり抜いたりする動きがダンスとボクシングは通ずるものがあり、驚きました。カッコ良いし楽しいし刺激になります。

コロナ中。初のテレビのお仕事。コーラスダンサーとしてミュージカルテイストのTVショウにでました。

カナダにきて一番辛かったことは?そこから何を学びましたか?

正直、一番辛かったのは日本の家族に全く会えなかったコロナのパンデミックの時期です。

その他だと、辛いというか一番悔しくて学びがあったなと鮮明に覚えている出来事があります。まだ来加2年目で日常会話レベルで英語が意志通りに話せない時期でした。何か国語も話せる同僚がそのことを上手く使い、他の同僚のお客さんを奪ってしまっているということがありました。それは違うのではないかとその同僚に伝えたところ、自分の英語でうまく表現できず言い負かされてしまいとても悔しい思いをしました。何か間違ったことがあったときに、英語でも自分できちんと伝えたり、対処できるようになりたいと思うようになったきっかけでした。その後、TESOLやビジネス英語などを必死に勉強をしました。それから自分の意志をきちんと伝えて問題を解決する出来事があり、言葉の壁を乗り越えたなと思いました。

何をするのが好きですか?

踊ること、人の身体を診て治すサポートをすること。幸い、ほぼ好きなことでお仕事をさせてもらっています。
それ以外だと、人に会ったり、時間を共有するのが好きです。物を買ったりするよりも、旅行をしたり経験などを買う方が好きです。なので面白そうなことがあれば覗いてみます。フットワーク軽めです。

日本からお母さまがサポートのため五ヶ月来加。一緒に写っているのは、チームメイトのお母さんで、Momoさんのカナダの家族。

今後やりたい事や夢について教えてください?

自分のスパ、スタジオを持ちたいなと思っています。鍼灸学校に行き始めた時からの夢です。スタジオを貸スタジオにしてイベントやダンスのクラスをしたり色んなことをしたいです。大きな夢としては、ビル一棟、一階はフィットネス、2階はデイケア、3階はネイルサロン、マッサージスパなど、友人みんなで出来たら楽しいなと思います。

Momoさんの信条やモットーを教えてください。

一日一日を大事に生きることです。震災やパンデミックを経て、改めて感じました。カナダに来てから「我がまま」に生きている人達がたくさんいて、楽しく生きることに罪悪感を感じる必要はないのだなと気づきました。息子ともよくケンカしていた時期もありましたが、一日の最後に大好きだよって笑って一日を終えるということを目標にしています。

チームメイトたちと撮影

Momoさんは4歳の男の子の子育て中です。

息子さんと二人での思い出の一枚

結婚をして息子を出産したのですが、互いに向いている方向が異なるようになり離婚し、今は一人で息子を育てています。平日の何日かはデイケアに預かってもらっていますが、練習や週末のダンスイベントなどは息子も一緒に連れて行っています。たくさんの方に可愛がってもらっていて、私より友達が多いくらいです。友達、チームメイト、ストリートダンスコミュニティには感謝してもしきれません。私は一人親ですが、そのことがネガティブにならないように私自身も努力しています。人生には大変なことはあるけれど、その中でも自分の好きなことをみつけ、好きなことをしてイキイキと実際に私が生きることで「生きるのは楽しいよ」と息子に背中で見せていると思っています。息子と喧嘩することはありますが、私一人の意向だけではなく息子の意向も聞き、話し合い、協力し合いながら生活しています。色んな場面で、やりたいことをやるにはママは一人では全ては出来ない、息子の協力が必要と正直に話し、なんとか仕事と子育てのバランスを取っています。

バンクーバーは、のびのび子供たちを育てていて、子供を生んで住みやすいなと改めて実感しています。息子には、何か好きなことや情熱をもてることを見つけて、将来困難にぶつかったときにそれらが解決の助けとなればと願っています。

息子さんが2歳になった直後くらいに初めて一緒にしたお仕事。

子育てをしながら気づいたこと

妊婦5ヶ月でのショウ。お腹が小さめだったのでまだ踊れましたそう。息子さんはお腹の中にいたときから踊ってました。

子供を持つと、ママであることを最優先しないといけないことが多々あります。息子が生まれた当時、自分はママに向いていないのではないかと思った時期がありました。「良いママ」になろうと思いすぎていたのだと思います。結婚当時のワンオペ子育て中にダンスのお仕事を頼まれたとき、お仕事から帰ると息子に対し「会いたかった」という思いが沸き上がることを経験を通して、カテゴリー「ママ」だけではなく、「モモ」をちゃんと持っていていいのだと感じたのです。ママである前に自分でいていいのだということを意識するようになってから子育ても上手く行くようになりました。いろいろな「カテゴリ」を取っ払ってまず「自分」であることを意識することがとても大事なのだと学びました。日本でももっとこういった意識がオープンになっていったらいいなと思います。

レッドブルでの審査員パフォーマンス

離婚を選択したことについて

「普通のお家」に憧れていたことこともあり、シングルになる前は凄く怖かったです。日本だったら自分自身を抑えつけることで離婚しない選択をとっていたかもしれません。カナダだからできたのかなと思います。カナダは色んな意味で上手くバランスをとれる場所だなと感じます。小さい頃からどんな選択をしても、その後どういう風に自分が動くかで変わると思っていて、今のところ良い方向に向かっているし、これからもどんな選択をしても自分次第だなと思っています。

最後に、

以前は一度築いた安定を壊すのが怖かったんです。でも、こちらの人って100% sure行く!と言いつつ当日来なかったりしますよね。カナダ人にその理由を聞いたことがあるんです。そのとき思った気持ちは100%sureだったけれど、毎日事情や体調は変わるのだし、その時に行きたくないと思ったのに無理に行くことは自分に優しくないよねと話してくれました。

何年も経って学んだのは、自分も変わるんだということ。ダンスの仕方も変わるし、自分が好きだったことも変わる。変化は悪いことではない。諸行無常。変わることって大抵心地が悪いですよね。その心地悪さを心地よくすることが人生のモットーだと思っていたのですが、今は心地が悪いことが普通のことと捉えるようになりました。子供が出来て環境が変わったらステージが変わる。ステージが変われば考え方も変わるし、自分も変わる。それは良くも悪くも順応していくもの。でもそれって一生そう。そう考えるようになってから、新しいことは勇気がいることだけれど変わる事は悪いことではないのだなと思うようになり、肩ひじ張らなくなりました。昔は怖くて手を出せなかったこともとりあえずやってみようと挑戦できるようになりました。

2022年に行われたフランスのイベントのカナダ予選!
決勝

編集者より

Momoさんとの出会いは、Ogojo Jan食べるラー油のブースを出したTaiwan Festivalに、幼い息子さんと一緒に来てくれたのがきっかけだった。ノースリーブの袖から見える腕の筋肉を見て「スポーツをされているのですか」と聞いたら、なんとMomoさんはブレイクダンサー。彼女のインスタグラムに載っているMomoさんは、私が会ったママMomoではなく、ダンサーMomoで、超かっこいい。インタビューをお願いして話を聞いてみると、彼女の生き方も超かっこよかった。指圧しとしてカナダに来て、結婚して、出産して、子育てして、マッサージ師として働いて、ダンサーとして各地を飛び回り、今は俳優にも挑戦している。そんなMomoさんを見ていると、自分を制限しているのは、他の誰でもない私なのだと気づかされる。カナダに来た日本人女性に共通しているのは、うまく人に頼ることができないことだと思う。しかし、Momoさんは周りの人に助けられながら子育てをし、自分のやりたいことに正直に生きている。そこに至るまでには、いろいろな葛藤があったと思う。今は自分の状況を受け入れて、乗りこなしている。尊敬するの一言だ。

カナダで開催されたブレイクダンスの大会で優勝し、夏にはフランスで開催される国際大会に息子さんを連れて参加する予定だそう。彼女のインスタグラムをフォローして、ぜひ応援してくださいね!

Momoさんのインスタグラムはこちら