- カナダのどんな所が好きですか?
- いつからカナダに住んでいますか?来た理由を教えてください。
- 30年間で12の市町村と日本、アメリカ、イギリス、カナダの4か国に住んでみて感じることを教えてください。
- 色々な国に住んでいる中で移民としての葛藤があったそうですが、それついて教えてください。
- 現在、何をされていますか?
- Mikiさん自身、色々な大学で勉強されていますね。
- 留学コンサルタント会社AK Jumpについて教えてください。
- ダイバーシティ&インクルージョンに関する地域ボランティア活動の取り組みについて教えてください。
- Mikiさんは、留学のアドバイスだけではなく、カナダでインクルーシブ教育のツアーなどもされています。
- 日本でのインクルーシブ教育の導入について
- 今後の目標を教えてください。
- Mikiさんは、大学で色々な事を学んだり、社会に貢献のために活動したりされていますが、そのモチベーションはどこから来ているのですか。
- 何をするのが好きですか?
- あなたの信条やモットーを教えてください。
- 最後にメッセージをお願いします。
- 編集者より
カナダのどんな所が好きですか?
人の多様性だけでなく、地域的に多様性が異なる所です。ビクトリア、バーナビー、カルガリーとオタワに住む経験をしました。オタワは首都なので世界各地から留学生が来ていて、ビクトリアとはまた違う雰囲気で西海岸とは全く異なる人間模様やモザイクが見えてわくわくして楽しかったです。
西海岸はアジア系が多いので、長く住むならバンクーバーは住みやすいと友人に言われたことがあったのですが、今はその理由が良く分かります。カルガリー大学では、当時留学生が3%程度で後はほぼ白人の生徒ばかりでした。その中で前に出てリーダーになっていくということは、言語や文化の理解の壁もあったためなかなか難しいと感じました。それが簡単に出来たのは西海岸のバンクーバーです。日系は5万人います。日本人は集まりたがらないので離れたければ離れて暮らせるし、関わりを持ちたければ良い程度に関われる住みやすい都市だなと思います。

いつからカナダに住んでいますか?来た理由を教えてください。
1991年にカルガリーにホームステイをしたのが最初です。その時に旅行して立ち寄ったビクトリアが気に入り、もっとここで勉強したいなと思ったので半年後に留学のために戻ってきました。カールトン大学のESLで英語を学んだ後、カルガリー大学で東アジア研究(政治経済とジェンダー研究)を専攻し、学士号を取得、2000年、シカゴ大学アジア研究科に交換留学しました。2003年にLondon School of Economics and Political Scienceで経済史(グローバルヒストリー:IT産業における女性の問題と貢献)の修士号を取得しました。

30年間で12の市町村と日本、アメリカ、イギリス、カナダの4か国に住んでみて感じることを教えてください。
アメリカやイギリスに住んだときに驚いたのが、アメリカ人に「カナダ語を話すの?」とか「みんな毛糸の帽子かぶってるんだよね」と聞かれたり、イギリスは未だに産業革命のことを自慢げに話していたり、多くの人が自分の国以外に興味がないことでした。カナダが一番世界のことを見ていて、1988年に人種・民族差別を無くし多文化主義を掲げる政策と法律、Multiculturalism Actが出来た最初の国ですし、多様性を祝い民族・文化の違いを受け入れることが法的に守られている、Multicultarlism(多文化主義)の国だなと感じます。移民の人が過ごしやすい、成功しやすい、守られている、安心して住める福祉国家です。もっと認知度が上がっても良いのではないかなと思います。
色々な国に住んでいる中で移民としての葛藤があったそうですが、それついて教えてください。
カナダに移住してしばらくの間、女性支援、Immigrant Women AssociationやMulti Cultural Societyなど新移民の人達のお世話や、ドメスティックバイオレンスの被害女性たちの支援ボランティアをすることで、自分のアイデンティティや社会での位置をいつも確かめていました。
そんな中、移民としてのアイデンティティに悩んでいたときに救ってくれたのが大学で学んだ社会学と心理学でした。心理学の中で、移民は自分を受け入れて、社会を受け入れて、自国の文化と移民先の文化を50/50でバランスよく取れるようになるのに平均7年かかるということを学び、自分もその過程にあるのだということを知り納得しました。


現在、何をされていますか?
2017年、ホームステイとアカデミックアドバイスのビジネスを始め、2020年、留学生をサポートするAK JUMP Educational Consulting Inc.を立ち上げました。日本のコンサルティング会社と共同で、人材マネジメントにおけるダイバーシティを推進するための活動も行っています。また、カナダではたくさんの地域ボランティア活動にも積極的に取り組んでいます。現在は、ウェストバンクーバー教育委員会のダイバーシティ&インクルージョン(Equity Diversity & Inclusion)委員会のメンバーであり、Whistler Multicultural Societyの移民の雇用平等と地域政治参加を支援するプロジェクトにも携わっています。

Mikiさん自身、色々な大学で勉強されていますね。
私は、日本、カナダ、アメリカ、イギリスで大学に通ったのですが、カナダの大学が一番良いと思いました。公立の大学の質は高く、ティーチングに力を入れています。教授の質、視点、セオリーの使い方、一番バランスが取れているのはカナダだなと思います。移民の教授も多いのでもっとグローバルな視点から多角的に見ていると感じました。
アメリカの教えはアメリカが世界の中心だという教えです。面白い話しなのですが、イギリスの大学は、30%のイギリス人と30%のアメリカ人、他ヨーロッパ10%、残り10%アフリカとアジアというクラスになっていて、開拓民のアメリカ人と産業革命のイギリス人でいつも討論で闘っていて、それをアジア・アフリカが傍観しているという世界の縮図状態になっていました。
留学コンサルタント会社AK Jumpについて教えてください。
6年前から我が家ではホームステイスチューデントを受け入れています。自分の子供たちがまだ幼くて話せなかった社会問題などの話しを一緒にしてくれるのが楽しく、私の心の支えになっていました。2020年、自分のこれまでの経験を生かせる留学コンサルタントの会社AK JUMPを起ち上げました。
カナダに来ると異文化に触れることで発見することが多く、物事を多角的に見られるようになります。私は留学生の子達にたくさん問いかけるようにしています。目の前に当たり前のように見えている物に疑問を持って考えてみると、違う視点から物事が見られるようになり、子供たちが開眼していきます。また、大学の論文を書けるようになっていくのを見守るのが楽しく、それをお手伝いすることに喜びを感じています。主体性、発信力、リーダーシップ能力も自然と身についていている姿を見るのが大好きです。
ダイバーシティ&インクルージョンに関する地域ボランティア活動の取り組みについて教えてください。
留学コンサルタント会社を起ち上げた直後、パンデミックになり留学生を受け入れられなくなっていまいました。全てがオンラインになっていく中、オンラインで色々な会に参加し、話して繋がり合っていくうちに、それを通して人を助けることが出来るのだということが分かりました。
もっとカナダのダイバーシティ&インクルージョンについて知りたいと思い、Whistler Multicultural Societyでコミュニティリーダーシップのプログラムを取りました。現在は、団体の理事を勤めており、ウィスラーでの移民の就活支援を担当しています。
こういった活動を通して、穴に目が行き届いていないのは、ダイバーシティインクルージョンの政策を当事者の移民側が作っていないからだということに気づきました。もっと当事者が声を上げていかなければいけない。意識改革と子供の教育、自主性を持って自分の意見を発信できる教育が大切だと感じており、私が力をいれているところです。

Mikiさんは、留学のアドバイスだけではなく、カナダでインクルーシブ教育のツアーなどもされています。
(ツアー注釈:https://vancouverprofessionaldeve.rsvpify.com)
カナダはインクルーシブ教育が目覚ましく発展してきています。カナダは、包摂性の大切さを政府がしっかり理解して法律でマイノリティを守る体制を作ってきました。
公正に誰一人として取り残さないことをビジョンに掲げています。これまでの自分の経験を通して、包括性や多様性の大切さが世界の社会問題の解決に繋がると信じています。
日本でのインクルーシブ教育の導入について
日本の社会の動きにもっと興味を持つようになり、日本の移民の子供たちは6人に1人が、東京だと4人に1人が未就学だという現状を知りました。日本語を教える先生が足りず、日本語が出来ないから学校にいけず、学校に行っていないから就職も出来ない。また、ここ10年で発達障がい児が倍以上に増えているのに行き場を失っています。通級や特別支援学校や特別支援学級に行くように促されます。通常学級が人手不足、資金不足、環境不足で、障害がある子供達に公正に提供されていません。
意識を変えるためにはどうしたら良いかと考えた末にたどり着いたのが、ダイバーシティインクルージョン教育です。色々な団体と協力し、カナダのインクルーシブ教育を推進する活動をし始めました。しかし、日本の学校教育が受験システムになっているのでフルインクルージョンにしていくのは厳しく、抜本的なシステムの変化が必要だと感じています。
今後の目標を教えてください。
カナダのようなインクルーシブ教育を日本に取り入れるのが私の目標です。
小さい頃から障がいを持つ人たちや多種多様な人達と交わって生活し、一緒に意見交換しながら学習をしていることが社会問題の解決に繋がって行くのだと思います。そういう意味でインクルージョンは大切です。インクルージョンの意味の理解と子供の発達への願いと思い、教育の中でどこに重点を置いているのかで異なります。日本も取り入れようとし始めていますが、地方自治体それぞれに運営自体は任せるという日本のシステムがインクルーシブ導入を遅らせているのも事実です。
人々のビジョンを変えていくのは子供への教育しかないと思っています。その子供たちが成長し、意思決定の場に参加して行くようになってようやく変わるのではないでしょうか。そこから始めなければ日本は変わっていかないし、変えられない。インクルーシブ教育をのみこみ、それを考える人がいて、教える人がいて、それを生徒に教えて一緒に考えていく。考えた生徒がその当事者になり、声を上げて政治に入っていくことで社会問題が解決されていくと信じています。
そのためにもグローバルコミュニケーションの能力やリーダーシップを身につけて欲しい。留学コンサルタントを始めたのも、そういう想いからです。日本人はとても素晴らしい国なのにとても控え目で発信力が弱いなと感じます。留学生が、海外から日本の良さを見直し、こちらの学習で身に付いた発信力を使い、帰国後に日本について世界に発信してしてくれることを望んでいます。

Mikiさんは、大学で色々な事を学んだり、社会に貢献のために活動したりされていますが、そのモチベーションはどこから来ているのですか。
悔しいという思いです。私は、日本のシステムや偏見に潰されたと思っています。女性はこうするべきだ、こうあるべきだとかいうしきたりに対してどうしたら良いのか分からず、自分自身で打ち破る力がありませんでした。海外に住んでいて、アジア人であることに葛藤を感じていたこともあります。それを解決することになったのが大学でした。マイノリティとして生きることの大変さや、なぜ社会に受け入れてもらえないのかという怒りを抱いていることに気づくきっかけにもなりました。一方で、私はカナダにいて日本人でいる事で価値をもらえました。日本人であるからこそ私であって、人はそこに価値を見出してくれる。日本や、日本の社会問題について知って、問題に対応していけるようになりたい。それが日本を少しでも良くしていくと思うし、自分のアイデンティティをしっかり持つことに繋がっていると感じます。

何をするのが好きですか?
おしゃべりをしたり、書くことが好きです。考えて人と話しをして気づきが起こり、それをまた人に伝えることが好きです。

あなたの信条やモットーを教えてください。
人の話しを偏見をもたずに聞くということです。偏見がなくなれば人生はバラ色になると思います。寛容さが無い限り人は変われないし世界も変わっていかないと信じています。
最後にメッセージをお願いします。
人は年齢は関係ないといいますし、表向き年齢を理由にしない風潮にありますが、「適当な年齢」というのはやはりあるんだとも思います。私自身が自分を取り戻す事に時間がかかり、それを逃してしまったなと感じるからこそ、一人でも多くの若者や子供たちに伝えたい。日本の窮屈な社会で、自信を無くし、自分は出来ない、能力がない、良い大学を出てないと諦めている人たち、そんなことはカナダでは全く関係ない。ただ良い大学に行けば良いものではないということも身をもって体験してきています。そんなものが無くても生きていく社会も考え方もある。人間力があれば選択肢や可能性は無限です。

Thank you.
編集者より
自分の生まれ育った国を出て生活することは多くの人にとって簡単ではありません。カルチャーショック、言葉や文化の壁、家族や友人たちと離れて新しく環境で生活を築いていくことの大変さはもちろん、公正に扱ってもらえないという経験をすることで自分のアイデンティティを無くしてしまうことも大きな理由なのではないでしょうか。「適切な年齢」を私は逃してしまったとMikiさんは話してくれましたが、長い年月をかけていろいろな経験をされてきたMikiさんだからこそ、インクルーシブ教育の大切さを伝え、若い世代に教えていくことが出来るのではないだろうかと強く感じました。そして、こんな経験豊富で熱心なカウンセラーさんに留学アドバイスをしてもらえたらなんと心強いだろうかと思いました。
ビジネスに社会活動に精力的に活動されるMikiさんを応援しています!
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