カナダで頑張る日本人女性

カナダで頑張る日本人女性 Vol. 16 Nenah Ida

カナダの好きなところを教えてください。

自由。年齢や性別でこうしなければいけないなどがありませんよね。例えば、職場でもう何歳だからそんな服を着ない方が良いと言われたり、親戚から女なんだから座っているときには正座をしなさいなどと言われたりしたことがあります。世代的に古い考えを持つ母からは、世間の目を気にして我慢しなさいと何度も言われました。カナダでは、世間を気にせず生きられるので自由を感じます。

Bundzen Lakeでパドルボード

カナダにいらしゃったきっかけは何ですか。

日本では、インターナショナルスクールの事務をしていました。英語は勉強していて海外に興味があり、1992年にバンクーバーに来ました。友人が先に来ていたこともありワーキングホリーデーで1年間来てみようかなと思ったのがきっかけです。最初の1年は、親も友達も恋しくて泣いてばかりしましたが、いつの間にか来加29年、来年30年になります。

最初は日系の企業のホテルでコンシアージュとして3か月働きました。その後その企業の秘書や、旅行会社でホテルを予約したりやバスの手配をするインバウンドのお仕事を経て、エアカナダの客室乗務員になりました。

エアカナダの同僚たちと

現在されているエアカナダでのお仕事について教えてください。

エアカナダに勤めてもうすぐ27年になり、ようやく中堅になりました。定年退職制が無くなったので一番長い人は50年以上勤めていて、もうすぐ80歳になる方も働いています。働こうと思えばいつまでも働ける企業です。組合に入っているので年功序列が優先されたり、福利厚生があります。長く務めるほど働く曜日や路線が選べるようになるので、月の半分しか働かないというスケジュールの組み方も出来るようになります。ベテランの方になると、たまに働いてステイ先で美味しい物を食べて仲の良い同僚と働いて、戻ってきたら自由な時間を楽しめるという利点があります。

時差をコントロールできて、第2、第3外国語ができ、サービス業が好きな人に向いているお仕事だと思います。色々な語学を話せるとそれが有利に働くので、私は北京語の勉強をしました。会社のテストに合格するとその路線が選択できるようになります。2年に一回の試験がありそれに合格しなければいけないので、試験前になると必死で勉強します。時給制で、満たさないといけない時間数によって自分で路線を選んでスケジュールが組めるようになり、選択肢や自由が増えるようになります。ようやくここ何年かで希望の時期に休みも取れるようになりました。

エアカナダに入ってから日本人だけでなく、年齢やバックグラウンドの異なる人達と働くきっかけが出来て、社交性を身につけることが出来たと思います。自分で自分のお金を稼げるという自信にもなりました。

私にとってはとても合っている仕事だなと思います。

パリのエッフェル塔の前で

月に何回くらいフライトがあるのですか。

70-80時間を飛ばないといけないのですが、COVID以前は中国便、ハワイ便、成田便、韓国線など月3−4本飛んでいました。私はなんとか残れましたが、COVIDにより1万人の客室乗務員のうち7000人ほどがレイオフされ、2021年の11月から全員呼び戻されました。経済が戻ってきているのでヨーロッパ便、南アメリカ便が増えていきました。一度仕事に出ると5~6日間は家には帰れないこともありますが、他に協力してもらえる家族がいないので、夫とスケジュールを合わせて娘の送り迎えなどなんとかやっています。

中国語はどれくらい勉強されましたか。

途中でやめてしまったのもあり8年かかりました。この仕事に就くためにもう一つ言葉が話せた方が役に立つと言われたので始めたのですが、だらだら勉強して試験にも落ちて挫折も経験しました。それでも会社での自分でのポジションが有利となることもあり努力しました。

好きなことを教えてください。

今は韓国ドラマを見ることが好きです。恋愛ものよりはサスペンス物が好きで色々観ています。

また、身体が資本の仕事なので、体力を維持することを目標にしています。昔はフラメンコを習っていたこともあります。フランメンコを始めたときに、自分だけの時間を持つ大切さと楽しさを実感しました。

ハワイでサーフィンをするのが好きです。コロナで日本人の観光客が激減だそう。

カナダに住んでいて一番大変だったことは何ですか。

気の合う友達に出会うまでに時間がかかったことです。日本人だから気が合うとは限らないし、気が合う人だなと思っていても5年10年経つと違ってきたり。気の合う友人がいない時期もあると思えるようになるまでが辛かったです。30年住んでいる中で、離れていった人もいたし自分から距離をおいた人もいましたが、その中で周りに残ってくれる人というのは私自身が相手を尊敬できる人でした。

モットーや普段心に留めていることを教えてください。

人に説教をしない!知ったかぶりをしたり、上から目線で言うことがないように気を付けています。自分が良かれと思ってアドバイスしていても、相手からは良いとは思われてないこともありますよね。

また、できるだけネガティブな言葉を口に出さないように心がけたいと思っています。これまでの経験から、物事をポジティブに捉える努力をして待っていると物事が良い方向に向かってくれた気がします。

今後の目標などはありますか。

老化防止のためにも中国語の試験に受かり続けることです(笑)。あと、娘の前で夫と意見の相違を顕にするのを控えたいです(笑)。自分には欠点がたくさんあり落ち込む事も多いですが、人間として成長していきたいと思っています。今でも自分の欠点に気づく毎日です。気づくことを辞めたくない、気づく自分でありたいです。

カナダで頑張っている方たちへのメッセージをお願いします。

周りの女性を見ていて感じるのは、努力したり何かを実行しているという人は必ず実を結ぶし、その努力をするという行為が自分を育て、新しい道へと導いてくれるのではないかということです。すぐには自分が思っている道に繋がらないかもしれないけれど、そこで養った忍耐力や努力する習慣が他に繋がっていったり、そこで知り合った人達が後で繋がりとなったり。新しいことが明日見つかるかもしれないので、前を向いて振り向かずに努力することが大事だと自分の紆余曲折の人生を経て改めて思います。

エアカナダに入って、年齢や性別、国籍やバックグラウンドに関係なく扱ってもらえることを体験しました。みんな平等でみんな大なり小なり問題を抱えたりしています。周りに、勉強をしたり努力を続ける同僚がいる環境に自分がいられる事は恵まれていたなと思います。だから私も中国語の勉強をしました。

カナダに移住してもし仕事などに悩んでいる方がいらっしゃったら、何かしら初めてみてはどうかなと思います。それがすぐに仕事に繋がらなくても、それはいつか自分の役に立つのではないでしょうか。そして、妻としてだけではない自分、母親としてだけではない自分、自分だけの自分を見つけて欲しいなと思います。そうすると、自分自身こうありたいという姿が見えてくるかもしれません。

ありがとうございました。

編集者より

カナダの大企業で長年働くNenahさんは、バリバリ働き自立しているカッコ良い女性です。

新しい土地で、一から生活の基盤を築き始めるのは容易いことではありません。日本での学歴、経歴がカナダに移住してから真っ新になってしまったという方も少なくありません。目の前の「しなくてはいけないこと」に追われて生活しがちですが、 Nenah さんのおっしゃる妻でも母でも誰でもない「私」である時間を作ることで「何をするのか、したいのか」が見えてくるのではないでしょうか。Nenahさんにとってお仕事をしている時間は「私」である大切な時間であるのだろうなと感じました。新天地でどのように生活していけばいいのか悩んでいるのならば、まずその「何か」をまずやってみるその行動が大きな一歩となるのだとインタビューを通し教えてもらいました。