カナダで頑張る日本人女性

カナダで頑張る日本人女性 Vol. 14: Miyuki Dezaki

カナダの好きなところを教えてください。

やっぱり自然です。大阪のあまり自然が無い所で育っているので、少し車を走らせるだけで山、海や川に行けることが嬉しいです。泳ぐことが大好きで、ノースバンクーバーのLynn Valleyのクリフから飛び込んだ時には最高に気持ちが良かったです。

ダイビング@沖縄。水が大好きです。ライセンスを取る予定です。

バンクーバーにいらした理由を教えてください。

東京で事務職をしているときに勤めている会社が自己退社を募ったことをきっかけに、ワーキングホリデーに行くことを決めました。それでもワーホリをするかどうか決められなかったので、1か月間バンクーバーにホームステイをしました。BMXのセミプロでスポンサーもつき毎週大会に出ていたり、ナイキのCMでテレビに出たりしていたので、BMXを海外でもやりたいと思い自転車を持ってカナダへ行きました。友人やフェイスブックなどを通してBMXをしている友達がたくさんでき、もっとカナダにいたいと思いワーキングホリデービザで再びカナダに入国しました。ワーホリ期間中には、FITT(Forum for International Trade Training)という国際貿易のディプロマを取得しました。

BMXを始めたきっかけを教えてください

学生の頃からバンドやギターをやっていて、学校では軽音に入ったり、外では友人とデュオを組んだりしていました。私の作詞作曲で、友達が歌い、私がギターを弾きハモリを担当していました。優勝したらデビュー出来るという大会で、2位になったりしたのですがしっくり来ない何かを感じていました。ギターを駅で練習していたある時、BMXライダー達が来て目の前でぶわっと乗り始めたんです。その頃ちょうど心に来る何かを探していたのもあり、これは楽しそう!と心に来て。始めたのはそれからです。

毎日毎日、クレイジーなくらい練習をしてやっと一個の技が出来るくらい難しかったです。私がやっているのはフラットランドというBMXで、毎日学校、会社から帰ったらすぐに鞄を置いて練習に行く日々でした。週末も自転車三昧でした。

今でもBMXをされているのですか?

カナダに来るときにセミプロを辞めて自分のペースで乗ることに決めました。でも、高校一年生から始めて20年近く毎日子供が生まれるまでやっていました。子供が生まれてからは少しお休み中です。復帰をしたいと思ってはいるのですが、練習も定期的に出来ないのでなかなか難しいです。

Miyukiさんは、ERD SOAPというハンドメイドのナチュラルソープのビジネスをされています。ERD SOAPについて教えてください。

カナダに移住してから起業は視野に入れていて、カナダ永住権を取得してからは具体的に何をするか探していました。もともと肌が弱く、カナダに来て乾燥で肌の調子が悪くなってしまいハンドメイドソープを使用していました。自分でも石鹸を作ってみようと石鹸作りレッスンに参加したその時、何か自分の心の中に「来る」ものがあったんです。石鹸を作ることで気持ちも上がるし、悩んでいる人たちの肌を治してあげたいと沸き上がる何かを感じました。良い物をみんなに教えたい、知って欲しいという想いを持って、2015年石鹸の会社ERD SOAPを起ち上げました。

たくさんの情報を集め、勉強をして石鹸のレシピを自分で考えました。全てお肌に優しい石鹸にデザインしました。まずは、材料を徹底的に調べました。例えば、一つの石鹸は、カナディアングレーシャークレイ(カナダの氷山のクレイ)を使用しています。一粒一粒が角がなく丸いのが特徴です。毎日使ってもお肌が痒くならないし、含まれるミネラルがお肌に良い石鹸です。

はちみつ、ゴートミルク、エッセンシャルオイルなど、なるべくローカルの物を使用するようにしています。

ERDにはどのような意味があるのですか?

なるべく地球にある物を使って石鹸を作り出したいというコンセプトがありました。「地球」という言葉を会社名に入れたかったのですが、残念ながらEarth Soapは既に会社登録されていました。他国の言葉を色々と調べてみたところ、スコットランドのゲール語のERDは地球を意味し、覚えやすいし響きが良いのでERD SOAPに決めました。ロゴには、カナダの山の絵を入れたり、メープルマークを入れてデザイナーさんに作ってもらいました。

石鹸はカナダ国外でも販売されているのでしょうか。

ヤマト運輸で働いていたこともあり、その時に輸出入の勉強をたくさんさせてもらいました。その時の経験を生かして日本への販売も手掛けています。

もともとワーホリで来たときから、起業することは念頭に置いていたのでFITTのディプロマを取ったのですが、その後ヤマト運輸で働きながら輸出入の勉強をしたり、一連の流れは自然と出来ていたように思います。

もっと日本への販売を強化していきたいと思っていますが、今はカナダ国内の卸売りの注文が中心となっています。

ビジネスが軌道に乗るまでの道のりを教えてください?

最初は、Google Adを試したり、石鹸を持ってメインストリートや4thアベニューなどを歩いて飛び込み営業をしながら販売店を確保したりしました。日本では、雑誌に載せてもらったりしました。ファーマーズマーケットで販売したりSNSで宣伝したりする人は多いですが、歩いてお店を訪ねて営業をする人はあまりいなかったからなのか有難いことに広がっていきました。ただ、大量に購入してくれる卸売り業者を獲得したのは、これまで長く続けてきたからだと思っています。

もっとERD  SOAP として海外に広げていきたいというのが目標です。まずは日本にもっと販売を広げていくことを目指しています。

ERD SOAP インスタグラムはこちら

カナダに住んでいて大変だったなと思うことはありますか。

ビジネスを始めた頃ですね。絶対に売れると思って始めました。こんなに良いものを作っているのだから絶対に売れると信じていました。今思うとポジティブすぎたんだと思います。でも、理想と現実は違って、なかなか売れず上手く利益に結びつかず両親に支援してもらったりした苦しい時期もあります。

何が打開策となったと思いますか。

長く続けたことだと思います。UBCファーマーズマーケットに出店し始めてから4年になります。だんだん売り上げが上がっています。コロナをきっかけにローカルのスモールビジネスをサポートしようというお客さんが増えたのもきっかけです。また、たくさん買ってくれるお客さんというのは、前から私の商品を知っているというお客さんです。それを見ていると長く続けていることって大事なんだなと思います。私がここにいるよということを知ってくれていること、プロダクトを知ってくれていること、信用をしてくれているということなんだなと思います。あきらめずに長く続けた結果だと思います。

正直、諦めて辞ようと思ったこともありました。石鹸ビジネスもやりつつ、他に仕事もしながらビジネスをしようと心を決めた瞬間に心が軽くなるのを感じました。どっちもやって良いんだと気づいてから、こういう形で続けてみようと気持ちを切り替えました。今は、ERD SOAPを続けながら、木材の輸出会社に勤めています。最終的には石鹸一本でやりたいなと思っています。

短期間で集中して上手くいかせようとすることよりも、どのようにして長く続けていけるかを考えたほうが良いということですね。

そうですね。短期間でやろうとすると、段々商品のクオリティが落ちてきてしまうことに気づきました。ERD SOAPは、植物の種を使用し色を付けたり、アロマオイルを使用して香りを付けています。正直、フレグランスや人口着色料を使用して作っている石鹸会社の方が多く存在します。それは、材料費が低く抑えられるからです。私自身も利益が出る事を考えて、葛藤したことがあります。でも、フレグランスって肌に良くなくて、アレルギーを持っているお客さんが使うと肌が荒れてしまいます。そういったお客さんは一回買ってもらっても次回がないですよね。一瞬の利益は減るかもしれないけれど、長い目で見た時に、クオリティの高い物を提供し続けたことが今の売り上げアップに繋がっています。

また、ビジネス一本に集中していた時は、利益を上げることに集中するあまり、石鹸を作ることが楽しくなくなってしまっていました。今の働き方に変えてからは、また石鹸作りが楽しくなりパッションを持てるようになりました。逃げ道になるかもしれないけれど、仕事があるから石鹸が売れなくても大丈夫と思える事で精神状態が落ち着きました。

何度も買ってくれるコアなお客さん達と話しをしていると、クオリティを下げずに商品を作り続けたことは間違っていなかったんだとここ1~2年で実感出来るようになりました。こういうお客様たちは、他の石鹸も使用した上でERD SOAPに戻ってきてくれたお客様で、たくさん購入していってくれます。

手作り石鹸は、すぐ溶けて無くなってしまうイメージがあるのですがどうなんでしょう。

ERD SOAPはそこも工夫をしていて、長持ちするように一個材料を加えているんです。それってコストがよりかかるということなんです。でも、お客様がERD SOAPが他の石鹸より長持ちすることに気づいてくれます。そして、お肌の弱い人には特に戻って買ってくれます。

心に気にかけている言葉やモットーがあれば教えてください。

「自分が使いたい物をお客様に提する」です。自分も敏感肌なので、自分何が使いたいかを大事にしています。何を買ってくれるかももちろん考えますが、どんな製品を自分の肌に直接塗りたいか使いたいかを考えるようにしています。

これまでのお話しの中で、「自分がどう感じるか、思うか」がMiyukiさんのポイントになっているなと感じるのですが、「これだ」と感じた時に迷ったりしないのでしょうか。

人生一回きりですよね。昨日にはもう戻れないし、本当に一瞬一瞬今しかないと思って生きています。だから、新しいことを挑戦したり、自分がやりたいことに対してあまり怖がらないのかなと思います。

家族や友人など色々なしがらみってありますよね。それでも、人のためではなく、自分のために生きる。死ぬときに後悔しないのはどちらかなと考えた時に、やりたいことをやって失敗して、失敗したとしてもそういう人生の方が色々やって良かったなと思えると思うんです。

トライアンドエラーで別に間違ってもいいと思います。トライするから見えてくることがありますよね。ギブアップすることが最大のエラーですよね。そこにいってしまうと全てが終わってしまいます。例えば、これを辞めるのはこれをやりたいから、ギブアップした先に何かがあれば良いんです。しんどいから、もう続けたくないからというギブアップだとそこでストーリーは終わってしまいます。

今からビジネスを始めようとしている方にアドバイスをお願いします。

ビジネス一本でやることってかっこいいし、やっぱり夢ですよね。でも最初から気負い過ぎない方が良いのかなと思います。ゆっくり一歩一歩進んでいかないと自分もしんどいし、最終的にダメになってしまって辞めてしうことになると思います。最初は気負わず、仕事をしていてもいいし、そこから段々と大きくしていけばいいのかなと思います。長く続けていくことが大事です。

ありがとうございました。

EDITOR’S COMMENT

才能だけではなく、自分の熱意や好きな気持ちが結果を突き抜けさせる。みゆきさんは、好きなことや閃いたことに事に対して迷いなくエネルギーと集中力を傾け、目標を達成したり想いを実現されて来られました。年齢を重ねるにつれて、様々なしがらみが増えていくように感じますが、どんな時でも自分の気持ちをまず大切にすることが大事であることを改めて実感しました。

物事を長く続けることは決して簡単なことではありません。それでも、妥協することなく良い物を提供するという信念を持って作り続けてきたERD SOAPは、これからも日本やカナダを初め、様々な国でたくさんのファンを作り続けていくことでしょう。たくさんの人に良い物を知って欲しいというみゆきさんの想いを今後も応援していきたいです。

クリスマスシーズンのプレゼントにもおすすめです。

ERD SOAP ウェブサイト http://erdsoap.com/ca/